長野県飯田市の遠山郷から標高1,900m超のしらびそ高原へと駆け上がる「南アルプスエコーライン」は、全長27km・獲得標高1,505mを誇る国内屈指の山岳ルートです。スタートとなる標高567mの上町宿周辺には、秋葉街道の宿場町の風情や国指定重要無形民俗文化財「遠山の霜月祭り」を伝える祭伝承館天伯、江戸末期の民家を保存した「ふるさと山村保存館 ねぎや」など、山深い隠れ里ならではの歴史文化が息づいています。そこから急勾配の坂道を登り進めると、最大傾斜38度の急峻な山肌に家々と畑が張り付くように広がる絶景集落「下栗の里」が現れます。「日本のチロル」や「天空の里」とも称されるこの集落では、展望台から南アルプスの山並みを一望できるほか、「そば処 はんば亭」や「食事処 いっぷく」「高原のロッジ下栗」などの食事処が点在し、名物の下栗いもを使った芋田楽や手打ち蕎麦でしっかりと補給することができます。
下栗の里を抜けて南アルプスエコーラインの本線へと入ると、民家や人工物が一切姿を消し、静寂に包まれた手つかずの大自然が広がります。苔むした石垣と鬱蒼とした深い樹林帯の中、平均勾配8〜10%前後のタフなヘアピンカーブが幾重にも連続し、サイクリストの脚力と精神力が試されます。道中では冷たい天然水が湧き出る「上村湧水」が貴重な潤いを与えてくれるほか、日本国内で初めて確認・認定された御池山の隕石クレーター周辺を通過していきます。さらに標高を上げるにつれて視界が開け、切り立った岩肌が露出するダイナミックな山岳景観へと一変します。車の往来が極めて少ないため、大自然と一対一で向き合うような圧倒的な没入感を味わえるのが最大の魅力であり、最高標高1,910m付近のピークやしらびそ高原に到達した瞬間、眼前に広がる南アルプスの雄大な大パノラマがすべての疲労を吹き飛ばしてくれます。
麓からしらびそ高原を目指す登り方向は、標高差1,300m以上を持続的に登り続ける上級者向けのハードなヒルクライムとなるため、序盤から無理のないペース配分と下栗の里での計画的な補給が完走の鍵を握ります。一方、高所から山麓へと駆け降りる下り方向は爽快なロングダウンヒルが楽しめますが、見通しの悪いブラインドコーナーが連続するうえ、路面のひび割れや浮き砂利、落葉・小枝が散乱している箇所が多いため、確実なスピードコントロールが求められます。新緑と残雪のコントラストが美しい初夏や、山肌が鮮やかに染まる秋の紅葉期は特に絶景が楽しめますが、頂上付近と麓とでは気温が10℃以上変化するため、季節を問わず防風・防寒ウェアを携行して挑みましょう。