かつて信州から毎日十石もの米が運ばれたことに名を由来する「旧十石街道」は、群馬県の神流町から上野村へと神流川沿いの山懐を抜ける約14.8kmのルートです。バイパスの整備によって旧道区間は車の往来がほとんどなく、切り立った岩肌が迫る渓谷美や静かな山里の風景の中をマイペースに走ることができます。神流町から上野村へ向かうと獲得標高約300mの緩やかな登り基調となり、急勾配に苦しめられることなく深い森林と清流の気配に包まれた爽快なクルージングを楽しめます。中間地点付近では全長618mの父母トンネルを通過し、穏やかなカーブを描きながら山あいの道が続いていきます。
街道沿いには江戸時代に幕府の天領「山中領」として栄えた歴史が色濃く息づいており、時が止まったかのような集落や白井宿の佇まいがサイクリストを迎えてくれます。周辺には山中領の大総代を務めた国指定重要文化財の「旧黒澤家住宅」や、寛永年間の関所跡近くに立つ樹齢約390年の県指定天然記念物「白井関所のイチイ」といった歴史遺産が点在し、往時の街道情緒を辿る散策も大きな魅力です。また、恐竜の足跡化石が残る「瀬林の漣痕」や渓谷を彩る「白水の滝」「蛇木の滝」などの見どころも多く、上野村側の「道の駅 上野」では特産のいのぶた料理や十石みそソフトクリームで充実した補給が楽しめます。