群馬県の草津温泉と長野県の志賀高原・山ノ内町を結ぶ全長42.2kmの志賀草津道路(国道292号)は、標高2,172mの「日本国道最高地点」を擁する日本屈指の山岳ルートであり、すべてのヒルクライマーが憧れる聖地です。古くは上州と信州を結ぶ「草津峠」として湯治客や善光寺参りの旅人が行き交った歴史を持ち、「The PEAKS」や「Japan Peaks」など数々の山岳イベントの舞台としても知られています。草津温泉から山ノ内町へ向かう場合、湯煙が立ち昇る「湯畑」や「西の河原公園」といった活気ある温泉街を抜けると、直ちに本格的なヒルクライムが幕を開けます。序盤は爽やかな森林帯のワインディングですが、標高を上げるにつれて森林限界を越え、荒涼とした火山地形や芳ヶ平湿地群を見下ろすダイナミックな大パノラマへと景観が劇的に変化していきます。
連続するヘアピンカーブをクリアして山田峠を越えると、視界が大きく開けた稜線上に「日本国道最高地点碑」が現れます。眼下に広がる雄大な山岳風景を背に愛車と記念撮影ができるこの場所は、登頂の達成感を最高潮に高めてくれるハイライトです。すぐ近くの群馬・長野県境に建つ「渋峠ホテル」では名物の自家製パンを味わえるほか、日本国道最高地点の到達証明書を入手することもできます。さらに近隣の「横手山ドライブイン」や標高2,307mの「横手山頂ヒュッテ」に立ち寄れば、北アルプスや雲海を望みながら熊笹ソフトや焼きたてのパン、ボルシチでエネルギーを補給できます。一方、山ノ内町から草津温泉へ向かう場合は、深い原生林に包まれた静寂なつづら折りをじっくりと登り詰め、志賀高原を抜けて峠のサミットへ達した瞬間に草津側の荒々しい火山景観が突如として目の前に広がる感動を味わえます。
春先の開通直後に現れる巨大な「雪の回廊」の間を駆け抜ける特別な体験から、下界より10℃以上涼しい真夏の避暑ライド、そして山肌一面が鮮やかに染まる秋の紅葉まで、訪れる季節ごとに全く異なる表情を見せてくれるのも大きな魅力です。ただし、草津温泉街の天狗山ゲートから渋峠までの山岳区間には自動販売機や売店がほとんどないため、登坂前に温泉街のカフェや商店で水分と補給食を十分に確保しておくことが欠かせません。また、標高差が1,400m以上に及ぶため夏場でも山頂付近は冷え込みやすく、霧による視界不良や急な天候変化も珍しくありません。長いダウンヒルでは急勾配と連続するカーブが続くため、万全の防寒装備と確実なブレーキング技術を備えて挑むことで、国内最高峰の絶景ワインディングを心ゆくまで堪能できるでしょう。