長野県佐久市から立科町の白樺高原方面へと抜ける蓼科スカイラインは、日本の一般舗装道でも屈指の標高を誇る大河原峠(標高2,093m)を越える全長約30kmの本格山岳ルートです。古くは坂上田村麻呂や最澄も通ったと伝わる歴史ある山越えの要所であり、現在は深い原生林と高原の絶景を貫く静かな山岳林道としてサイクリストを魅了しています。全線を通して交通量が極めて少なく、夏場でも木陰と高所の冷涼な空気に包まれるため、下界の猛暑を逃れてじっくりとヒルクライムに向き合える極上のフィールドです。
佐久側から大河原峠を目指して登る場合、麓の苔むした古刹・貞祥寺やぴんころ地蔵尊がある里山から、約24kmにわたる長大なヒルクライムが始まります。序盤の緑深い樹林帯から次第に勾配を増し、連続するヘアピンカーブをクリアしていくと、標高約1,400mの静謐な美笹湖を経て、山中に突如としてそびえ立つJAXA美笹深宇宙探査用地上局の直径54mの巨大パラボラアンテナが姿を現します。深い森の先に待つこの近未来的な光景は、長い登坂の疲れを吹き飛ばす圧倒的なハイライトです。
さらに標高1,800mを超えて森林限界に近づくと視界が大きく開け、最高到達点の大河原峠へと到達します。峠のすぐ近くにある巨岩「兜巾の岩」からは佐久平や浅間山、北アルプスまでを見渡す360度の大パノラマが広がり、格別の達成感を味わえます。峠から立科町の御泉水自然園や白樺湖方面へと続く区間は、美しい白樺やカラマツ林を抜ける高原ワインディングとなりますが、地形が険しく冬季閉鎖や悪天候による通行止めも多いため、事前の道路情報確認が欠かせません。