一般車両が通行できる車道峠として日本最高標高の2,360mを誇る大弛峠は、多くのサイクリストが憧れる国内屈指の山岳ヒルクライムルートです。山梨市の琴川ダム(乙女湖)近くにある柳平ゲートを起点に、県営林道川上牧丘線を約14.8kmにわたって駆け上がり、獲得標高は約895mに達します。柳平から大弛峠へ向かう登り方向では、人工物が一切ない手つかずの深い森林と荒々しい岩肌に囲まれ、静寂に包まれた圧倒的な大自然の中を走ることができます。
序盤は持続的な勾配が脚力を試しますが、中盤に入ると傾斜が緩やかになり、リズムを整えて走りやすくなる区間が現れます。見通しの悪いコーナーや連続するヘアピンカーブをクリアしながら標高を上げていくと、後半には徐々に木々の間から視界が開け、雄大な山岳の稜線を望みながら爽快にペダルを回せます。春から夏にかけての新緑と涼風、秋には山肌や琴川ダム周辺を彩る鮮やかな紅葉など、標高2,000m超の高山帯ならではの季節の移ろいも大きな魅力です。
柳平から山頂までの約14kmの林道区間には自動販売機や売店が一切ないため、起点手前の金峰山荘周辺で事前の補給を済ませておくのが鉄則です。ゴールとなる峠の頂上には公衆トイレや「大弛小屋」があり、温かい軽食やコーヒーで登頂の余韻に浸ることができます。さらに峠から徒歩15分ほどの景勝地「夢の庭園」へ足を延ばせば、富士山や南アルプスの大パノラマが一望できます。なお、峠を越えた長野県側は岩が転がる未舗装路となるため、ロードバイクは登ってきた道を折り返すことになります。