栃木県日光市の川治温泉から川俣温泉へと、鬼怒川最上流部を遡る全長約31.3kmの山岳ルート。会津西街道との交差地点である川治温泉付近から川俣方面へ向かうと、標高約490mの起点から標高1,000m超の高原域へと至る獲得標高814mのロングクライムとなる。序盤は視界の開けた快走路で、美しい渓谷と山林を望みながら緩やかに高度を上げていく。中盤以降は本格的なワインディングが続き、後半の標高900mを超えるエリアでは迫りくる岩肌と深い森の中を抜けていく。全線を通して交通量が少なく、静寂の中で自分のペースで走りに没頭できるのが大きな魅力だ。
平家の落人伝説が色濃く残る旧栗山村の秘境を貫くこの道は、歴史的なダムと渓谷美の宝庫でもある。国内有数の高さを誇る川治ダムとエメラルドグリーンの水を湛える八汐湖をはじめ、日本最古の発電専用重力式アーチダムである黒部ダム、切り立った岩壁に佇む川俣ダムなど、電源開発の歴史を物語る土木遺産と湖水の風景が次々と現れる。特に川俣ダム直下に位置する「瀬戸合峡」は、鬼怒川の浸食によって削り出された深さ約100mの断崖絶壁が連なる「とちぎの景勝100選」の景勝地で、初夏の新緑や秋の紅葉が渓谷を彩る季節には息をのむような絶景が広がる。
走りごたえのある山岳路ながら、道中には魅力的な立ち寄りスポットも点在する。スタート地点となる川治温泉では、無料の足湯「かわじいの湯」や「坂文精肉店」の名物キャベツメンチが楽しみになり、中盤の栗山地区では「栗山ふるさと物産センター」での休憩や、「そば処 北の路」「三水庵」での風味豊かな手打ち蕎麦と旬の山菜天ぷらがヒルクライムの活力を養ってくれる。終点の川俣温泉は熱湯が噴き上がる間欠泉で知られる鬼怒川源流域の秘湯で、ここから山王林道を経て奥日光へ抜ける山岳ライドや、湯西川温泉へと繋ぐ周回コースの主要区間としても多くのサイクリストに愛されている。