塩川ダムが造るみずがき湖からクリスタルラインへと駆け上がる、全長6.8km・獲得標高約390mのヒルクライムルート。序盤の県道韮崎増富線は滑らかな舗装が続き、本谷川渓谷のせせらぎや涼やかな「雁音滝」を横目に軽快なリズムで標高を上げていく。中盤に現れる増富温泉郷は、戦国時代に武田信玄が金山採掘の折に発見した「信玄公の隠し湯」として知られ、世界有数のラジウム含有量を誇る名湯だ。老舗宿「不老閣」などが並ぶ鄙びた湯治場の情緒が、ペダルを回す足をふと緩めさせる。
温泉街を抜けると道はクリスタルラインへと繋がる「林道本谷釜瀬線」へと変わり、針葉樹と広葉樹が織りなす深い山林へと分け入る。道幅が狭まり斜度も増す手応えのある登坂となるが、すぐ脇を流れる渓流の音や道端に鎮座する「送り狼」の石像が山岳ライドの旅情を高めてくれる。とりわけ秋には川沿いのカエデやミズナラが鮮やかに色づき、渓谷美と紅葉のコントラストは圧巻の一言だ。終点付近の瑞牆山荘周辺にたどり着けば、日本百名山・瑞牆山の切り立った巨大な岩峰群が目の前に迫り、登り切った達成感とともに山小屋カフェでの休息や絶景を存分に堪能できる。